病気の豆知識
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食道癌 逆流性食道炎 胃潰瘍・十二指腸潰瘍 胃癌 大腸ポリープ
大腸癌 過敏性腸症候群 憩室炎 貧血 ウイルス性肝炎
ピロリ菌について        
ものを飲み込んだ時に食べ物が通って胃に入るまでの食道にできる癌です。
  最近ではサザン・オールスターズの桑田さんが手術したことでTVでもよく解説されていました。 比較的早期にリンパ節などへの転移を生じることがあり、それだけに早期発見が望まれる癌ですが、その一方早期発見が難しい癌でもあります。食事をして物を飲み込む時に引っかかる、落ちてゆかない、などといった症状はもはや早期癌の症状ではなく進行した癌が食道の内腔へボッコリと飛び出しているための症状です。 ですから、食道癌の危険性の高い方−50歳以上・男性・喫煙者―に対して内視鏡検査を行なう際には、より注意深い観察が必要とされ、特殊な染色をして早期癌の発見に努めることになります。 食道癌に限らず、どこの癌であっても早期発見に勝る治療の第一歩はないのです。
 
胃で産生される胃液が食道に逆流することで胸焼けや胸痛といった様々な症状を引き起こす病態です。
  胃液は酸性の度合いが非常に強い消化液ですが、基本的には(例外はあるのですが)胃の中にある内は悪さをしません。 それは胃の粘膜が粘液で護られているからです。 「粘液が減ってきたのかな・・」「胃にベール〜・・・」といったCMをご覧になったことがないでしょうか。 ところが食道にはそうした防御システムがありません。 ですから胃液が食道に逆流すると食道の粘膜が傷ついてしまうのです。 こうした症状を改善するのにとても有効な薬があります。 ですが、日常生活のちょっとした注意で改善することもあるのです。 @ 食べてすぐ横にならない。 A 甘い物や炭酸飲料を控える。 B 血圧の治療をしている方は、主治医と相談して降圧剤の種類を見直してもらう。これはある種の降圧剤が胃の入り口の圧を弱めて胃液の逆流を起こしやすくするからです。
 
胃潰瘍・十二指腸潰瘍 胃や十二指腸の粘膜がえぐれてしまうことで痛みや、場合によっては出血を起こします。
  ほとんどの場合薬で治ります。 しかし、再発を繰り返す場合があります。 この場合は胃の中にピロリ菌がいることが多いです。 ピロリ菌は5歳までに感染が成立していて、現在50歳以上の方の40%程度の方が保有しています。逆に若年者には少ないのです。 また、今胃の中にピロリ菌がいない若年者が年齢を重ねてもピロリ菌保有者にはなりません。 言い換えれば、ピロリ菌のいる方が除菌に成功すれば、再感染はほぼないと考えられています。 ピロリ菌は、潰瘍以外にも胃癌・特発性血小板減少症・ある種のリンパ腫に関与しています。 ぜひ一度検査をして(内視鏡検査を原則としていますが、ピロリ菌の有無だけをみるのであれば息を集める検査でも判定できます)ピロリ菌がいるようであれば薬による除菌を行うことをお勧めします。
 
胃癌  早期胃癌と進行癌に分かれます。
特に早期胃癌ではそれによる症状はないものと思っていただいて構いません。
進行胃癌になった場合でも、癌ができた場所によって症状が出たり、あるいは全く無症状であったりします。
例えば、胃の入り口(噴門)や出口(幽門)は胃の他の部位よりも細いので、腫瘍ができると通過傷害が起き、「吐いてしまう」ということになります。
しかし、同じ大きさの腫瘍が胃の真ん中辺りにできた場合には、通過傷害を起こすこともなく、癌は無症状のまま更に進行することになります。
その場合、肝臓などへ転移を起こし、根治的な治療は不可能になってしまいます。
逆に癌が早期であって、粘膜もしくは粘膜の下にほんの少し浸潤している程度であれば、開腹せずに内視鏡を用いての切除が可能です。
現在、胃癌の内視鏡手術としては、EMR(内視鏡的粘膜切除術)と、より広範な病変の治療に用いられるESD(内視鏡的粘膜剥離術)があり、それぞれの病変に応じて方法が選択されています。
 
大腸ポリープ 無症状です。
  大きなポリープの場合は自覚症状として出血がある場合がありますが、検便で異常なしと判断されてもポリープなしとは言えないのです。 最近は技術の進歩もあって、内視鏡的ポリープ切除が広く行われていますが、正直何でもかんでも切除する必要はありません。 ポリープの種類にもよりますが、7mm以下であれば経過観察で問題ないものと思います。 実際、年ごとに経過観察しても変化ないものが多いのです。 そんなポリープまで、出血のリスクと引き替えに切除する必要はないのです。 このあたりは内視鏡医の観察眼にかかっていると言っていいでしょう。 癌化の危険性があるものについてはもちろん切除が必要です。
 
大腸癌 意外に思われるかもしれませんが、これも進行癌になるまでは無症状です。
  大きくなると出血を伴なったり、腸を塞いで便やガスが通らなくなり腸閉塞になったりするのですが、そうなるまでは症状がありません。 近年、特に女性の大腸癌が増えています。 どうしても心理的な抵抗の大きい検査ではありますが、50歳を過ぎたら是非一度大腸内視鏡検査を受けていただきたいと思います。 早期のものであれば、内視鏡による切除も可能です。 言い換えれば、内視鏡で切除可能な癌の場合は症状に乏しいのです。
 
全ての内臓についていえることではありますが、内臓の動きは自律神経によってコントロールされています。
すなわち、自分の意志でコントロールすることはできません。
自律神経には2種類あって、簡単にいうと「動きをよくするもの」と、「動きを抑制するもの」があり、どちらかの働きが強過ぎたり、あるいはどちらかの働きが弱過ぎたりすることなく、ちょうどよい働きになっているのが通常です。
しかし、このパワーバランスが崩れてしまうと、消化管の動きが必要以上に強くなって下痢がちになったり、あるいは逆に消化管の運動が弱くなって便秘がちになったりします。
これが、過敏性腸症候群の病態です。
下痢が主症状の患者さんは、比較的若い男性に多い傾向があります。
午前中に症状が強い方が多く、極端な場合通勤途中で何度も途中下車してという例もあります。
こうした症状は、年齢と共に自然軽快することも多いのですが、前述の下痢の様に生活に支障を生じるような場合には治療が必要になります。
ただ、この場合も症状から診断は可能ではありますが、潰瘍性大腸炎やクローン病などの炎症性腸疾患を鑑別する目的で大腸の検査をお受けになることをお勧めしたいと思います。
 
憩室炎 腸に出窓のように外に突出した部分があることはよくみられ、これを憩室といいます。
  何らかの原因でここに炎症が起きると腹痛や出血が起きることがあり、この状態を憩室炎といいます。 憩室は便秘傾向の強い方に多いのですが、そうとも限らないようです。 実は私自身、便通は非常にいいのですが、内視鏡検査の結果憩室が多発しておりました。
 
貧血 日頃よくお聞きになる病名だと思いますが、これは病名というより様々な病気によって引き起こされた結果としての状態です。 以前、外来に「めまい」を訴えられてみえた方がありました。 通常「めまい」であれば耳や脳血管の疾患をまず考えますが、この方は診察で目をみたところ真っ白で、著明な貧血があることがわかりました。 すなわち、この方の「めまい」は貧血によってふらふらすることの表現だった訳です。 女性の場合、健康診断で貧血を指摘されることは希ではないと思いますが、男性の場合(特に60歳第台までは)、貧血は普通ないものと考えて構いません。 言い方を変えれば、我々が男性の貧血を見た場合、まずは胃や大腸からの少量ずつ持続する出血を疑うのです。 その原因疾患として胃癌や大腸癌があります。 ですから、健診などで貧血の指摘を受けたような場合には、やはりしっかり検査すべきであると考えます。
 
ウイルス性肝炎

代表的なものとしてA型肝炎、B型肝炎、C型肝炎があります。

(A型肝炎)
糞便経口感染をします。すなわち、不衛生な地域で感染が多い傾向があります。
また、日本のような環境下でも、ウイルスに汚染された水や野菜、カキ等が原因で感染することがあります。
感染した場合、風邪のような症状に続いて黄疸が出ます。
医療機関を受診なさる方の大部分はこの時点になります。
血液検査では肝機能の数値(GOTやGPT)がかなりの数値に上昇していて、ほとんどの場合入院加療になります。
ただ、A型肝炎であることが確定した場合、特異的な治療があるのではなく、安静のための入院になります。
A型肝炎は感染後、強い免疫ができるので、2度罹患することはありませんし、慢性化して肝硬変などに至ることもありません。

(B型肝炎)
A型肝炎と異なり、急性肝炎で終わるものの他、少数ではありますが慢性肝炎に移行するものがあります。
感染経路は、以前は予防注射における針の使い回しがありましたが(2013年現在係争中であることはよく知られています)、現在そうしたことは行われておらず、あるとすれば覚醒剤などの非合法的な注射が行われる場合です。
現在、感染の主な経路は性行為であると考えられます。
慢性B型肝炎の大部分は、母子感染によるものです。
お母さんが慢性にB型肝炎ウイルスを持っている場合、出産の際に赤ちゃんが感染を起こすことが多いのです。
赤ちゃんは、免疫機能が未完成であるため、進入してきたウイルスを『異物』と認識せず排除しません。そのためにB型肝炎ウイルスがいついてしまい、『キャリア』と言われる状態になります。
現在は、こうした出産の場合の対策も講じられており、たとえB型肝炎をお持ちの方でも安心して出産できるようになっています。
B型の慢性肝炎については、いろいろな検査でその治療方針が決定され、インターフェロンや抗ウイルス剤による治療が行われています。

(C型肝炎)
ほとんどの場合慢性化し、肝硬変、そして肝がんの発生に繋がる原因になります。
感染力はA型やB型と比較して弱いのですが、一旦感染した場合に慢性化することが問題なのです(極論すれば、極希に見られるB型肝炎ウイルスによる劇症肝炎を除き、急性肝炎は完全に治るわけで、あまり恐れなくてよいのです)。
感染経路は、ほとんどの場合血液を介したもので、日常生活の中や性行為で感染することは希です(ただし、ゼロではないので注意は必要です)。
治療はインターフェロンや抗ウイルス剤が用いられます。
この数年で治療成績も飛躍的に向上し、またインターフェロンも副作用の少ないものになっています。

以上、代表的なウイルス肝炎について述べましたが、いずれにしてもまずは感染の有無を知らなければいけません。
出産なさった方や、献血をなさった方は、そうした点を間違いなくチェックされています。
一方、一般的な健診では肝機能障害の有無までは確認できても、その原因まではチェックされていません。
ですから健診などで肝機能障害の指摘を受けた方は、こうしたウイルスに関する検査や、超音波検査を是非受けて頂きたいと考えています。

 
ピロリ菌について

2013年、慢性萎縮性胃炎におけるピロリ菌の除菌治療が保険適応になりました。
ピロリ菌がいそうな胃か、いそうもない胃かは、ある程度の経験を積んだ内視鏡医なら肉眼で判断できます。
その上で、裏付けとしてのピロリ菌の有無を調べることになります。
過去にピロリ菌の除菌治療を受けていない場合であれば、内視鏡検査をしなくても血液検査(ピロリ菌に対する抗体の有無を調べます)、もしくは息を集めて行う検査で判断することができます。
しかし、今回の保険適応に際しては、内視鏡検査がなされていて、萎縮性胃炎の所見が確認されていることが前提になっています。
これは、ピロリ菌によって発生頻度が上昇する胃癌を見落とさないために必要です。
今後は胃癌に対する健診も変わり、『ABC検診(胃がんリスク検診)』という言葉が聞かれるようになると思われます。これは以下の考えに基づいています。
ピロリ菌感染のない人から胃がんが発生することはごくまれです。また、ピロリ菌感染によって胃粘膜の萎縮が進むほど、胃がんが発生しやすくなります。胃粘膜の萎縮の程度は、胃から分泌されて消化酵素ペプシンのもとになるペプシノゲンという物質の血液中の濃度を測定することでわかり、基準値以下の人は、6〜9倍胃がんになりやすいことがわかっています。
胃がんリスク検診(ABC検診)とは、ピロリ菌感染の有無(血清ピロリ菌IgG抗体)と胃粘膜萎縮の程度(血清ペプシノゲン値)を測定し、被験者が胃がんになりやすい状態かどうかをA〜Dの4群に分類する新しい検診法です。血液による簡便な検体検査であり、特定検診(メタボ健診)などと同時に行なうこともできます。
胃がんリスク検診(ABC検診)はがんそのものを見つける検査ではなく、胃がんになる危険度がきわめて低い、ピロリ菌の感染がなく胃粘膜が健康な人たち(A群)を精密検査の対象から除外し、ピロリ菌に感染(またはかつて感染)して胃粘膜に萎縮のある人たち(B〜D群)には、胃がんの存在を確かめる精密検査(内視鏡検査等)を受けていただくものです。近年、若い方々を中心にピロリ菌に感染していないA群の割合が増えており、多くのA群の人たちが内視鏡による精密検診を受けないで済む点が大きなメリットです。